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ジュニアスイマーに起こりやすい腰痛と特徴について(腰痛、腰椎分離症)

アスレティックトレーナーの藤野です。

日頃から競泳のチームや選手、患者さんのコンディショニングに携わる機会が

多く、今回はトレーナーや現場からの観点で

ジュニア世代(小学生〜高校生)の水泳選手に起こりやすい腰痛の特徴など

ご紹介いたします。

 

 

肩に次いで2番目に多い部位


 

水泳選手に起こる腰痛は、肩の痛みに次いで2番目に多い故障です。

これは競泳のパフォーマンスを左右するストリームラインが影響します。

体を真っ直ぐに保つ際に背筋群が活動し、疲労する事で筋・筋膜が緊張します。

その際に体幹の筋群(腹筋や股関節周囲、背筋など)が弱っていたり

アンバランスがあると腰痛を招きやすいと考えられます。

 

特にジュニア世代の成長期は、骨が柔らかく、体幹筋力や関節の柔軟性なども

一時的にバランスが悪い状態を招きやすく、発生リスクが高い時期であると

考えています。(腰椎分離症など骨の疲労骨折を招きやすい)

 

 

オーバーユース(慢性的)が疼痛発生の要因


 

これらは一回の練習や、一本のレースで痛める怪我や故障ではありません。

毎日の練習や生活での積み重ねが、局所にかかるオーバーユースとして

慢性的なストレスで故障につながります。

(大学生などダイブの練習中に痛くなることもあります)

急に痛くなる事よりも、少しずつ腰が痛いな〜と感じている日々の

積み重ねが、ある朝突然として強い痛みに変わっている。というケースが

多いです。

 

 

 

では何故同世代のスイマーの中で、腰痛に陥る選手と

そうでない選手に分かれるのでしょうか??

それには腰痛を招く、条件があります。

今回はその特徴(条件)を上げておきたいと思います。

 

 

腰痛を招きやすいスイマーの身体的な特徴


 

・姿勢が悪い

猫背(背中が丸い)や反り腰といった背骨がどんな姿勢であるか

これは大きく関係します。

特に水泳ではストリームラインの姿勢で、腰が反りすぎる選手

腰痛に陥りやすい傾向にあります。

 

 

・片側の捻り動作

クロールや背泳ぎなどのローリングのある種目の選手は

右、左とどちらか一方に体を捻るクセを持つ選手が多くいます。

クロールで言えば呼吸、背泳ぎではプルの深い方など

泳ぎやすい本人のリズムの取り方や体の使い方が影響しています。

これら片側だけの捻り動作が極端に多いと腰部に捻れストレスを増大させ

腰痛の原因となります。

 

 

・肩甲骨〜胸郭の可動性

競泳の特徴として、手のかき(プル)が推進力を生み出す事に関して

カギとなります。 したがって、上半身のテクニックや筋力が重要であり

その為に疲労を感じる部位としても、肩や腕などの上半身が多く上げられます。

筋肉の特性として疲労したり、緊張状態が続くと硬くなることがあります。

上半身の筋群が硬くなると、肩甲骨や肩関節の可動域は低下して

同時に胸郭(胸骨、肋骨)も可動性を失い、結果的に腰部の伸展(反り)や

腰を捻る事で代償してしまい、腰痛の要因となります。

 

 

・股関節の可動域

見落とされがちなのが、この股関節です。

特に股関節の伸展可動域、内旋可動域の不足は

水中動作における腰部の代償を招きます。

エネルギー効率がよく、推進力の高いキックを行う為には

必ず必要な可動域となります。 パフォーマンス自体にも大きく

影響する項目であります。

 

 

・体幹の筋力不足 又は アンバランス

ストリームラインの姿勢は腰背部の筋群が活動し体を伸展位(真っ直ぐ)に

保った姿勢となります。この姿勢を保ちつつ、プルやキックの動作を行う為

水中動作での腰部の伸展が起こりやすいのが競泳の特徴です。

その為、腹筋や背筋、股関節周囲、など中心部の筋群が必要であり

特に腰部の過伸展を止める働きをする筋群が必要となります。

現場では下腹部の腹筋や腸腰筋、背筋の上部、多裂筋、臀筋など

腰部の伸展(反り)を止めつつ、ストリームラインを真っ直ぐに保つための

筋群を意識してトレーニングさせています。

 

 

ひどい腰痛を訴える場合、どうすれば良いか??


 

もしお子さまや選手が「腰が痛い」と言ってきたり

選手ご自身がひどい腰痛を感じた場合、どうすれば良いか。

 

・朝起きたら急に腰が痛くなっていた。又は最近痛みが強い

→ 筋疲労性の痛み、もしくは腰椎分離症が疑われます。

ポイントは痺れの有無や下肢に力が入るかどうかなど神経症状の有無が

病状を大きく左右します。

整形外科へ行くことも一つですが、レントゲン上の判断で分離症、又は

腰痛として扱われることが多いでしょう。

 

 

・足や下半身への痺れ、又は力が入りにくい

→  整形外科へ行って、腰部の痛みと、痺れがあることを伝えましょう。

MRIなどの精密検査を勧められ、椎間板ヘルニアの疑いを示唆されるでしょう。

この場合強い痛みや痺れが引くには1ヶ月前後の時間を要します。

ここまでひどい状況にならない様に、日々のケアやトレーニングが必要です。

専門家の下で、リハビリの実施をお勧めします。

 

 

 水中での練習はどの様に対策すれば良いか??


 

・ボードのキック練習は腰部への負担が大きい

→ シュノーケルを付けて、ストリームラインキックに変えると良いでしょう。

 

・プル中心の練習

→出来るだけローリングを抑えて、真っ直ぐ泳ぐ練習を勧めます。

シュノーケルなど真っ直ぐな状態で泳ぐことに効果的です。

 

・ダイブやスタートダッシュなど

→ダイブ(飛び込み)は負担が大きいので痛みが強い間は

壁スタートなどに変えて、控える方が良いでしょう。

 

・コルセットの使用

→ コルセットで腰部を固定させて、泳ぐ事も良いでしょう。

腰痛になる原因として、腰部の過伸展や過度の捻り動作などが挙げられます。

その動作を減らす事でも、フォームの修正につながります。

 

・水中以外での取り組み(リハビリ、トレーニング)

→ 水中練習の前後で、ストレッチやトレーニングを行いましょう。

私は現場でのアドバイスとして、コーチとの相談を前提に

陸上でのトレーニングやリハビリを実施させていています。

特に練習中は痛くて出来ない時期や、抜ける練習もありますので

その際にただジッと見ているだけではなく、リハビリをプールサイドで

取り組む事で、本人も前向きな行動を取り組んでいると実感できます。

 

 

 

具体的な対策(リハビリテーション、トレーニング)


 

 

脊柱の伸展(上背部の可動性)を改善するストレッチ

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脊柱(背骨)の可動性を改善するエクササイズ

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胸郭の可動性を改善するエクササイズ

ポールでのセルフケア

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肩関節の可動域を改善するストレッチ

胸筋壁ストレッチ

肩関節後下方ストレッチ

上腕三頭筋ストレッチ

 

 

 

股関節の柔軟性を改善するストレッチ

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体幹のトレーニング

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水泳選手がおちいり易い、ストレッチの間違い!肩の痛みの原因はこれ!

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今回はこれまでにも数多く紹介している、競泳選手のストレッチについて

少し解説しておきたいと思います。

 

 

先日契約先のチームへの定期訪問へ出向いた際に

他チームからの選手が合同で参加しておりました。

 

以前に肩の手術(肩関節唇縫合)を行っているとの事で

調子がいまいち上がってきていない原因が肩に問題があるのでは?

とコーチの方から相談を受け、現状のチェックをすることになりました。

 

現在は肩の痛みは少し気になる程度ですが、本人の自覚症状もあり

僧帽筋や首の筋肉が非常に疲れやすく、肩も前に入り姿勢が悪い事を

指摘されているとのことでした。

 

オペ後は数年経過しているものの、本来の肩関節の機能は

あんまり良い状態とは言えず・・・ 根本的な原因は改善されていない様子・・・

関節可動域には制限もあり、肩を動かす際の運動軸や筋機能も

代償動作が目立ちました。。。

 

リハビリやトレーニングの方法を少し教えてほしいとの事でしたので

現状の問題点を指摘して、その改善方法になるエクササイズを

数点アドバイスしました。

 

この背景には、関節や周囲筋の硬さ、筋力、姿勢、運動量などの

個体、または環境などの要因が関連しますが、気になる点はチームで取り組んでいる

ペアストレッチの方法・・・  水泳選手はチームでの指導により

選手同士でストレッチを行う習慣がありますが

そのストレッチは方法にあやまりがあったり、闇雲に柔軟性だけを追い求めると

反対に肩関節を悪くさせ、ケガに繋がる事が多くあります。

 

その代表的なストレッチがうつ伏せの状態で、手を後ろに組み

そのまま、ペアの人が手を背中を通り頭の上の方へ押し込む方法

※今回は写真が用意できていませんが、分かる人は「あの方法か」と

おもわれることでしょう。。。

 

あのストレッチは肩関節の前方を過剰に伸ばしやすく

肩甲骨と肩関節のつなぎ目である筋や靭帯、関節包への

過剰なストレスをかけます。

 

ポイントを注意する事で、有効なストレッチなのですが

そのポイントを抑えている選手はきわめて少ないでしょう。。。

おそらくそこまで細かく指導されておらず、試合会場や合宿で

他校や他チームの選手がやっているのを見マネでやっている事が多い・・・

 

特に女子選手に多いのが、元々関節の弛緩性や柔軟性が高いのに

必要以上の柔軟性を求めて、ストレッチしているケース。。。

この状態では肩関節の緩みが強くなる一方です。

プラモデルで例えるならジョイント部分が緩々の浅いはまりの状態です。

こんな状態では少し動かすだけで取れてしまいます。

人間の体では、脱臼を意図的に近づけている状態と言えましょう。

 

この様なストレッチを継続していると、良かれと思って取り組んでいる努力が

水の泡・・・ むしろ悪影響となりパフォーマンスは一向に上りません。

関節が緩いという事は力を入れた際に関節が安定しないということです。

競泳の場合、推進力を強く生み出すためには、水を的確にとらえ

その水を安定した肩関節で捉えながら、体を前方に移動させる事が必要です。

その中でもし、関節が安定しないとどうなるでしょうか?

答えはお分かりですよね?

腕や肩だけに頼った泳ぎとなり、肩関節を痛めるか、パフォーマンスが

一向に上らないままトレーニングを重ねるか。。。

 

あなたが選手であったり、選手の親であったり、コーチであったら

どの道を選びたいですか??

闇雲に柔軟性を追い求めたストレッチは、選手を不幸にします。

正しい方法やポイントを指導出来る専門家にアドバイスをもらうことを

オススメします。

 

最後になりますが、この状態に陥っている選手は随分多くいます!

大切な選手の将来を壊さない為にも、早く正しい情報を身に付けましょう。